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| 漁師を通して自然を食べる! 産地直食・井戸田おすすめ料理取材記 |

知多半島、その先。
名古屋からいちばん近い島は、
今、天然ふぐが一番おいしい季節。
「日本の真ん中へ、うまいふぐを食べに行きませんか」。友人のWEB制作会社の担当者から電話がかかってきたのは10月の終わりだった。彼の知り合いの漁師宿から誘いを受けたという。「どこですか?」「あの日間賀島ですよ」。
愛知県は知多半島の先端、師崎(もろざき)(南知多町)からわずか2.4kmの沖合い。高速船で5、6分のところに日間賀島はある。名古屋からは約90分。島の周辺の海は岩礁が多く、魚介類の宝庫として知られるところである。
特に、「タコといえば日間賀島」と言われるほどタコは有名だが、実は冬の日間賀島は、下関と並ぶフグの二大産地。フグ漁解禁にあわせて、およそ70隻ものフグ延縄(はえなわ)漁船が日間賀島を出港していく。流れの速い遠州灘にいる天然フグは、身が筋肉質でキリッと締まり、恵みの海そのものの魚。冬の贅の極みともいえるそのフグを、産地直食で安く味わえる「日間賀島フグ料理」は、近年大きな話題を呼んでいる。
今回のお誘いの主、民宿「井戸田」のとうちゃんも漁師である。フグ漁は自分ではやらないが、漁師仲間から直に仕入れ、魚を知り尽くした漁師ならではの腕でさばく。「延縄漁で捕られる天然フグは、傷もついていない見事な姿だよ」。
では、そのふぐを、さっそくいただきましょうか。
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おかみさんのこだわり
今回の旅で我々が食したのは、とうちゃんの一番のおすすめ品、ふぐづくしスペシャルコース「たらふく膳」だ。
冬の太平洋の、潮風の冷たさと気持ちよさにさらされた体をゆっくりと温めてくれる、ほどよい室温に保たれた部屋で、まず出てきたのが、湯気がたったおしぼりと「フグ皮と白菜のサラダ」の突き出し。フグの皮がおいしいのは知っていたが、この白菜との組み合わせにはまいった。シャキシャキ、コリコリ、シャキッ・コリッ、コリコリッ・シャキシャキッ…口の中でおいしい音が弾けあう。
歯ざわりも絶妙だ。
「いろいろな野菜で試したんだけど、白菜がいちばんよかったんだわね。不思議な組み合わせだけど、けっこういけるでしょ」。客のくつろぎをじゃましないようにさりげなく話しかけてくれるおかみさんの言葉に、思わず大きくうなずいてしまう私たち。おかみさんの手からは、次なるお皿が差し出された。フグの定番料理「てっさ」(フグ刺し)である。
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3層の味が楽しめるフグの皮
フグは一匹から3種類の皮を味わうことができる。コリッとした食感でゼラチン質の一番外側の「サメ皮」、少し柔らかく味が良い「トウトウミ」、そして一番身に近い「身皮」である。
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「巻いてみて。まあ、食べてみて」。
漁師料理の真髄が、お高いイメージのフグを
とても身近な存在に変えてくれる。
「てっさ」は、ふぐの身をすけるような薄さに下ろした刺身であるが、井戸田のとうちゃんのてっさには、4種類の皮と3〜4cmのわけぎの短冊が添えられていた。疑問を口にするまえに、見ただけでコリコリッという音が聞こえてきそうなてっさの誘惑に勝てず、すぐさま2、3切れすくって、もみじおろしとわけぎ(小ねぎ)のみじん切りを入れたポン酢でいただく。その薄さからは想像できないようなぎゅっと歯を押し返すような弾力。よく「フグは淡白な味」と言われるけれど、噛むほどに旨みが染み出してくるような味わいがある。
「その旨みは、3日前の予約で味わえるんだね」と、とうちゃん。てっさは、フグを3枚に下ろ皮を剥いだあと、、身をタオルやペーパーに包んで一晩ほど冷蔵庫で寝かせ、水分をある程度とばしてから引くのだ。これによって、硬すぎず柔らかすぎない程よい歯ごたえと、淡白ながら深い旨みが出てくるのだという。新鮮でうまいてっさを食べるには3日前までの予約が絶対だ。
「それとね、漁師たちがやるうまい食べ方があってね…」。そういいながらとうちゃんは、てっさでわけぎと皮の数切れをすばやくくるくるっと巻き始めた。「これがうまいんだ。食べてみて」。疑問を解いてくれたその言葉に誘われるように口に運ぶと、てっさだけとはまた違うコリコリ感と旨みが口の中に広がってきた。「きれいに盛り付けられてるからって、上品に食べる必要は全くないよ。目で楽しんだら、活きがいいうちにどんどん口の中へほおり込む。活きのいいもんはどんな食べ方したっておいしいんだから」
目の前で獲れたものをすぐに料理する。そんな海で暮らす人たちのメシである漁師料理の真髄が、お高いイメージで一般庶民を敬遠しがちなフグ料理を、とても身近な存在に変えてくれている。これが、漁師宿の良さだ。
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「しょうゆとお酒だけ?
なのに、なんでこれほどうまいんだ!? 」
フグ巻き?の食べ方をすっかり気に入ってしまった我々の前に、次に置かれたのは、「フグの唐揚」だった。歯ごたえと冷たい舌触りを楽しんだあとの、あったかい唐揚を見て、一瞬、同じ魚であることを忘れそうだ。
しかし、食べると、やはりそこはフグ。お刺身みたいにぷりぷりしている。この唐揚は、頭と舌の部分など、いわゆるあらの部分を揚げたもの。味付けは、しょうゆとお酒を5:5の割合で作った出汁の中に30分漬け込んだもの。ほんの少しのおろししょうがを混ぜてあるというが、そんな素朴な味付けなのに、口の中に広がってくるこの旨みは、やはり新鮮な日間賀島のふぐならではだろうか。毎年、この唐揚を楽しみに来る方も多いとか。骨のまわりのゼラチン質がたまらなくおいしい。もう、これはヒレ酒を頼まねば…。「おかみさ〜ん」。
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「フグのあらの味噌煮ってどんな味?」
魚のあらといえば、味噌汁のだしに最適だが、ふぐのあらの味噌汁はあまり馴染がないもの。せっかくだから、食べてみたい!というわがままに井戸田のとうちゃんはできるだけ応えてくれるそう。夜のコースでは鍋があるので無理だが、予約時に頼めば、翌朝の味噌汁に登場するかも。もちろん、味は絶品。日によっては受けられない場合もあるので、まずは相談してみて。 |
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自然の鼓動が聞こえてきそうな、
まるまる一匹の醍醐味。
ヒレ酒とあらの旨みに舌鼓したあとに「焼きフグ」がやってきた。まるまる一匹のフグの身を手ごろな大きさに切って焼いたものだという。かぶりつきたくなる香りと照りだ。さっきの唐揚とは全く違う、もちもちした食感で、一口かじると、ぷりっと弾ける肉厚の身。しょうゆとしょうがで焼いただけだが、この歯ごたえが、味を引き立たせている。
「漁師料理は本来、海からあがった新鮮な素材を切ったり焼いたりするだけ。素材がよければ、それが一番うまいことをうちらは知ってるからね」。
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舌がとろけるとは、まさにこのこと。
しかし、驚いた。同じ魚であることはわかっている。しかも、どれもそれほど凝った料理ではない。なのに、全てに違う旨みがあり、味わいがある。
「白子焼」は、フグの白子にさっと塩をふりかけ、あぶる程度に焼いたものだ。もう、言葉はない。絶品だ。ほのかに焼けた外側に歯を入れると、中からじわっとろっと甘い旨みが舌の上を転げる。これまで白子を苦手としてきたことがうそのようにおいしい。白子は熱を加えると、とろみが一段と増しクリーミーで濃厚になるそうだ。
「これはね、私たちも調理途中で思わず口の中に放り込みたくなっちゃう逸品。竹串などで適度に穴をあけてあぶるんだけど、その穴から、ぐつぐつおいしいそうな音が聞こえてきてねぇ(笑)」。くったくのないおかみさんの笑いに一同爆笑。ちょうどいい箸休めをさせていただいた。
この白子焼きは、1〜3月にかけてのみの限定品。取材時は11月だったため、特別に出してもらったので、1〜3月の白子はこれの3倍の大きさがあるという。ない場合のコース料理は、「フグのたたき」か「フグの厚切りの刺身」に変わる。
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一度は、ぜひ食して欲しい、
「フグのたたき」
ふぐずくしスペシャルコース「たらふく膳」で、白子が提供できない場合、変わりにコースに入ることもある「フグのたたき」は単品料理としても用意されている。食欲をそそる香ばしさとコリコリ感。個人的にはぜひともおすすめしたい逸品である。
(1人前3,150円/税込)
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| 鮮度抜群(ぴちぴち)だから味わえる
「白子の“生(なま)”」
1〜3月、春にかけて大きくなる日間賀島のふぐの白子。そのむっちりとした希少価値品を、井戸田では予約時に希望すれば、なんと贅沢にも“生”で食することが可能だ。あるお客さんは「舌が震えるねぇ」と評していたとか。希少価値の割にはお手ごろ価格なのもうれしい。これもふぐの産地の漁師宿だからこそだ。
(単品料理で提供、1人前2,100円/税込、要予約。写真の品は11月のまだ小ぶりのもの)
ふぐの白子を鍋に入れれば、舌の上でとろけることをご存知の方も多いと思うが、生でも食べられる白子なら、その味わいはさらに深まる。一切れ残して、あとの鍋で少しの贅沢に舌鼓を打った私たちからのおすすめである。
さらにさらに井戸田には、新鮮な白子でつくった、とうちゃん特製「井戸田スペシャル白子酒!!」もある。この酒、とうちゃんいわく「たまらんおいしさ」のある酒だそうだ。取材時はシーズンオフゆえ飲めなかったのが残念!!
(1人前2,100円/税込、1月以降の予約)
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障子の向こうから
とうちゃんの声が飛んできた。
「その薄まったポン酢、残しといて」。
| ふぐづくしコースもいよいよ終盤。淡白なのに、えもいわれぬ味がある冬の一番のごちそう「てっちり」(ふぐちり)の登場だ。昆布を煮立て取り出しただけの透明なだしの中に、少しずつフグのあらと野菜を入れ、さっと煮えたところで食べる。「ヘルシーでコラーゲンたっぷりだから美容には特にいいんだわね、ふぐは。女性には特に食べてほしいよね」と言うおかみさんの肌は、そういえばつやつや。骨のそばの肉にコラーゲンが含まれているそうで、この食べ方が一番とすすめられ、少々行儀が悪いが、手づかみですするようにしゃぶりついた。本当だ、おいしい。ポン酢とフグは、どうしてこうも合うのだろう。そんなことを考えてポン酢をすすっていたら、「残しといてね、そのポン酢」という、とうちゃんの声。
その理由はすぐにわかった。てっちりをいただいた後、そのだしでつくった雑炊に、好みで入れるのだ。微妙な味加減には、薄まったポン酢が最適なのである。なるほど、自分の好みの味に出来る。本当においしい。くつろいだ雰囲気の中で出てくる、こんなアドバイスがうれしいものだ。
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| ふぐは低カロリーで、
コラーゲンもたっぷり食品
ふぐは高たんぱく、低カロリー食品。脂肪にDHAが多く含まれていてアレルギー症などにも効果がある。フグの皮はガンを予防する効果もある。 |
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とうちゃん漁師で、妻おかみ。
あったかくておいしかった井戸田の漁師料理。
また、来よう。うん、絶対来よう。
「日本の真ん中、遠州灘のフグは美味」。まさにそのとおりだと帰りの船の中で考えていたら、誘ってくださったWEB制作会社の担当者の口から、「本当は伊勢海老も、タコ飯も、それから井戸田のとうちゃんの獲ってくる自慢の大アサリも食べてほしかったなぁ」などという、後ろ髪を引かれる言葉が次々と飛び出す。
また来よう、絶対来よう。目の前に海という広大な生け簀があるかのような日間賀島に。島の保育園からの幼なじみだという、とうちゃんとおかみの、あったかくて素朴で、そして何より旨い漁師料理を食べに……。
(今回我々が食したのは、ふぐづくしスペシャルコース「たらふく膳」です)
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